「将来、どうなるんでしょう」と聞かれて、ちょっと考え込んでしまった。
「将来、どうなるんでしょうか?」
色々な場面で、よく聞かれるようになりました。
学校で講義をしている合間だったり、雑談のあいまだったり、ちょっとした相談を持ちかけられたタイミングだったり。聞かれるたびに、
うーーーーーーーーん。
と、ちょっと考え込んでしまったんです。
何か答えてあげたい気持ちはあったのですが、すべての人にぴたっと当てはまる答えが、すぐに出てくるわけではなくて。
その人の生活に合わせた数字を、その場で並べられるわけでもありませんでした。中立に、その人自身の数字で考えてもらえる道具が、私の手元になかったりします。
それからもうひとつ、日本では、お金の話を公(おおやけ)でする機会が、なんとなく少ない気がしています。
家庭でも、学校でも、職場でも、「触れにくいもの」として、ちょっと避けて通ってきた感じがあったりします。
そのままだと、受験・就職・結婚・家を買う・子どもを持つ、といった「大きなイベント」(人によってかたちは違ったりしますが)にきてはじめて、お金の話を真剣に開くこと、考えることになります。私自身も、まさにそうでした。
決めるタイミングが来てから、受験、就活、銀行の窓口や生命保険のパンフレットを開いてみたのですが、その場で全部を判断するのは、けっこう難しかったです。
自分が学生のときに、もしこういう道具が手元にあったら、人生はずいぶん変わっていたのかもしれないなあ、と思ったりもします。そんなことを考えながら、Life Design Studio という、小さいツールをつくっていきました。どんな道具になったのか、ちょっとだけ覗いていっていただけたらうれしいです!
Life Design Studio って、結局どんな道具なんでしょう?
Life Design Studio は、ひとことでいうと、お金の練習帳です。
もう少しだけ言葉を足すと、人生の選択肢をスライダーで動かしながら、3 分くらいで図にしてみるための、無料のシミュレーターです。

開くと、まずは年齢を入れていただきます。そこから、画面の左側に、収入・生活費・住まい・子ども・投資・副業・老後といったスライダーが並んでいきます。動かすたびに、右側の資産推移グラフと、年間収支の目安が、リアルタイムでぐっと書き換わっていきます。

たとえば「副業を月 2 万円ぶん増やしてみたら、65 歳のときの数字はどう変わるんでしょう?」みたいな問いを、何度でも、自分の数字で試していただけたりします。

入れていただいた数字は、お使いの端末の中だけで完結します。サーバに送ったりは、していません。アカウントの登録もメールアドレスの入力もないので、「人にはちょっと見せられないかも」という気持ちのままでも、安心して、まずは自分の数字を動かしてみてください。
金融商品をおすすめしたり、銀行口座やアプリへの登録に誘導したりは、しないことにしています。あくまで「お金の話を、机のうえに並べてみる練習帳」として、置いておきたいなあと思っています。スライダーを動かしていくと、右側のグラフが思わぬ動きをすることもあるので、ちょっと驚きながら、いじってみてください!
10 日のあいだに、企画書も仕様書も実装も、ぜんぶ並走していきました
Life Design Studio の最初の段階は、2026 年 5 月 7 日くらいから始まって、5 月 17 日あたりまでの、おおよそ 10 日のあいだに固まっていきました。あまり大きな方針転換らしい方針転換はなく、ただ「これは必要だな」と感じながら、ちょっとずつ向きを整えてきた、という感じだったりします。
このプロジェクトでは、「企画書」「仕様書」「ブランドガイド」の 3 つを、別々のドキュメントとして並走させて書いていきました。
企画書は「どうしてつくるのか・誰に届けたいのか」という、戦略の部分。
仕様書は「どう動かすのか・どんなページ構成にするのか」という、実装の部分。
ブランドガイドは「どんな見た目で、どんな声色で語るのか」という、視覚の部分です。
役割を分けたことで、書きながら矛盾が出てきても、どこを直せばいいのかが、ぐっと見えやすくなった気がしています。
並走している、というのは、たとえば仕様書を書きながら「あ、これは企画書のターゲット設定と合っていないかも」と気づいて、企画書に戻って書き直す、という往復が、何度もあったということです。順番に作るより、3 つを少しずつ進めながら、お互いを修正していくほうが、結果的に早く固まっていったりします。
最初は、使用者の対象をかなり狭く絞ろうとしていました。でも書いていくうちに、「これって、もしかして全員に必要な道具なんじゃないかな」と思うようになって、ペルソナ(届けたい読者の人物像)を 3 人まで広げました。大学生・新社会人・少し働きはじめた人、と、年齢と立場を分散させています。
金融計算のロジック、なかなか手強かったんです
いちばん頭を抱えたところは、なんといっても金融計算のロジックでした。
compute.js という、計算を担当しているファイルが、最終的に 800 行近くまで膨らんでしまいました。膨らんだのはそこまで手強くなく、手強かったのは線引き。
何に迷ったかというと、税制と、児童手当や教育費、それと現在価値(将来のお金を、いまのお金の感覚に直して考えるやり方)の扱いです。どれも「ここまで反映したほうがいい」「これは目安として簡略化していい」の線引きが、自分の中でなかなか定まらなくて。うーん、知識の沼です。
たとえば、所得税と住民税と社会保険料。額面の収入をそのままグラフに乗せるわけにはいかなくて、手取り額に直す必要があったりします。でも、税率は年齢や扶養人数や副業の状況によって変わるので、どこまで丁寧に表現するかで、コードの量がぜんぜん違ってきます。何度も腕を組みました。

いったんは、「いまの段階では、目安として十分な精度を目指していこう」と決めて、税制改正や、配偶者の年金、NISA / iDeCo の税控除といった細かい部分は、「計算の前提」を説明する別ページに、「考えきれていない要素」として正直に書いておくことにしました。
正直にお伝えすると、私自身もまだ、よく分かっていないところがたくさんあったりします。
詳しい方が読んでくださっていたら、ぜひ「ここ、こうしたほうがいいですよ」と教えていただけたら、本当にうれしいです。一緒に、少しずつ精度を上げていけたらいいなと思っています。
「売らないこと」と「続けていくこと」のあいだで、ちょっと考え込んだ話
もうひとつ、考え込んだのが、お金の話そのものでした。
Life Design Studio はお金のシミュレーターなのに、自分自身は「金融商品はおすすめしない」という方針で、続けていこうと思っています。じゃあ、ホスティング代やドメイン代は、どこから出るんだろう、と。腕を組んでしまう場面が、もう一回ありました。私はよく、お金のことを考えずに好きなことを赤字でつづけてしまうのですが、そろそろそれをやめる必要があるかもしれない、と感じはじめています。
最初は「広告もアフィリエイトもナシ」の構えで企画書を書いていました。でも、その方針だと、続けていくためのコストが、どこからも入ってこないことになります。続けていけないツールは、誰かにとって役に立つ前に、消えてしまうかもしれません。
そこで、2026 年 5 月 16 日の見直しで「金融商品はおすすめしない × 一般広告は表示することはあるけれど、金融ジャンルは配信から除外する」という、中間の方針に落としていきました。食品やニュースアプリの広告は出ることがあるかもしれませんが、銀行・保険・投資商品の広告は、機械的に除外設定にしてあります(といっても、まだ何も入れていなかったりするので、もしかしたらこのまま広告なしでいくかもしれません)。
「中立性を守ること」と「ツールを続けていくこと」、その二つのあいだで、いったん私が選んだ着地点が、ここでした。これがいちばん良い落としどころかどうかは、まだ自信は持てなかったりします。もし「こうしたほうがいいよ」というアイデアがあれば、ぜひ教えてください。
「人生のお金をデザインする」が、もう少し当たり前になったらいいなあと思います
ツールの名前、Life Design Studio についても、少しだけお話しさせてください。
「人生をデザインする」という言葉には、「自分で組み立てる」という、ちょっとした主体性のニュアンスを込めています。「訪れてくる未来」ではなくて、「選んでいく未来」。自分の手を動かしながら並べていけるものとして、人生を見てみるのも、おもしろかったりします(人生をデザインする、と書いてみたものの、自分の人生ですら、まだ全然デザインできていなかったりするのですが)。
Studio という言葉も、最後まで残しました。これは「立派な作品を作るための場所」というよりも、「練習場」というイメージに近かったりします。スタジオって、誰かが完成形を仕上げる場所というよりは、自由に音を鳴らしてみたり、絵を描いてみたり、何度でもやり直せる場所、という気がしています。
Life Design Studio も、そういう温度で使っていただけたらうれしいです。一度入れた数字を、何度でも動かしていただいて、「もし、この選択をしたら」をくり返し試していただけたら、いちばんつくった意味があったかなあ、と思います。完成した図はシェアできるようになっているので、ご家族や近しい人と一緒に並べてみるのも、たのしいかもしれません。
まずは動かしてみていただけたら、うれしいです! 感想も、ぜひ聞かせてください
ちょっと長く書いてきてしまいましたが、いちばんお伝えしたかったのは、「まずは触ってみていただけたら、うれしいです!」という、それだけだったりします。
数字は、あくまで目安です。考えきれていない要素もありますし、税制や為替やインフレといった「動き続けるもの」も、まだ完全には反映できていなかったりします。最後は、ご自身の状況にあわせて判断していただければ、と思います。
そして、もし触ってみて何か感じたことがあったら、ぜひ感想を聞かせてください。「ここが分かりにくかった」「この計算、もっとこうしたほうがよさそう」「私の場合はこういう数字でした」、どんなことでも構いません。お問い合わせフォームから、ひと言でも、気軽に投げていただけたら、本当にうれしいです。
Life Design Studio は、まだ最初の段階を走り終えたばかりの、できたてのツールです。これから少しずつ精度を上げたり、シナリオ比較を入れていったり、ポルトガル語版も考えていけたら……と、伸ばしていきたい方向は、いくつかあったりします。みなさんと一緒に、少しずつ育てていけたらいいなあ、と思っています。
それでは、まずはひとつ、スライダーを動かしてみるところから、楽しんでいただければ幸いです。